工場や倉庫を相続する場合、最初に必ず決めなければならないのが
「相続するのか、放棄するのか」
という選択です。
住宅の相続であれば「とりあえず相続しておこう」という判断もありますが、工場・倉庫の場合はそうはいきません。
なぜなら、工場・倉庫には
解体費用
設備撤去費用
土壌汚染の可能性
固定資産税
など、見えない負債が多く存在するからです。
今回は、相続方法の3つの選択肢と、工場・倉庫の相続での判断ポイントを整理します。
■相続方法は3つある
相続方法は法律で次の3つに決まっています。
① 単純承認(すべて相続する)
もっとも一般的な方法です。
財産も負債もすべて引き継ぎます。
工場・倉庫の場合、次のようなケースで選ばれます。
工場をそのまま使う
倉庫を賃貸して収益化する
売却して現金化する
土地が広く価値が高い
ただし、負債もすべて引き継ぐため、解体費用や設備撤去費用が高額になる場合は注意が必要です。
② 限定承認(プラスの範囲で相続する)
「プラスの財産の範囲で負債を引き継ぐ」という方法です。
例えば、
工場の土地が2,000万円
解体費用が300万円
借入金が500万円
という場合、プラスの範囲内で負債を処理できます。
工場・倉庫の相続では、
負債が不明な場合に有効
です。
ただし、
相続人全員の同意が必要
手続きが複雑
というデメリットがあります。
③ 相続放棄(すべて放棄する)
財産も負債も一切引き継がない方法です。
工場・倉庫の相続では、次のようなケースで選ばれます。
建物が老朽化して危険
解体費用が高額
土壌汚染の可能性が高い
固定資産税が重い
設備撤去費用が高い
借入金が多い
相続放棄の期限は
3ヶ月以内
です。
期限を過ぎると放棄できなくなるため、早めの判断が必要です。
■工場・倉庫の相続で「単純承認」が危険なケース
工場・倉庫の相続では、単純承認が危険になるケースがあります。
●老朽化している工場
解体費用が数百万円〜数千万円になることがあります。
●設備が大量に残っている
設備撤去費用が高額になることがあります。
●土壌汚染の可能性がある
改善費用が数百万円〜数千万円になることがあります。
●固定資産税が高い
土地が広い工場は固定資産税が高額です。
これらを知らずに単純承認すると、
「相続したら負債のほうが多かった」
というケースが実際にあります。
■工場・倉庫の相続で「限定承認」が有効なケース
限定承認は、工場・倉庫の相続で非常に有効な選択肢です。
次のようなケースで使われます。
工場の価値が不明
土壌汚染の可能性がある
設備撤去費用が読めない
解体費用が高額になりそう
借入金があるか不明
限定承認は、
プラスの財産の範囲で負債を処理できる
ため、リスクを抑えた相続が可能です。
■工場・倉庫の相続で「相続放棄」が最適なケース
次のような場合は、相続放棄が最適です。
工場が危険な状態
解体費用が高額
土壌汚染の可能性が高い
設備撤去費用が高い
固定資産税が重い
借入金が多い
工場を使う予定がない
相続放棄は「逃げ」ではなく、
負債を引き継がないための合理的な選択
です。
■第6回のまとめ
工場・倉庫の相続では、相続方法の選択が非常に重要です。
ポイントは次のとおりです。
単純承認は負債もすべて引き継ぐ
限定承認はプラスの範囲で負債を処理できる
相続放棄は負債を一切引き継がない
工場・倉庫は「見えない負債」が多いため慎重な判断が必要
相続放棄の期限は3ヶ月以内
次回は、
「工場・倉庫の現状確認(設備・排水・動力・消防・境界)」
を詳しく解説します。
