前回、設計段階で改善提案ができる会社は、単なる加工業者ではなく技術パートナーになれると解説した。
では、その提案は誰に向けて行うべきなのだろうか。
多くの町工場の経営者は、購買担当者との関係づくりに力を入れる。
もちろん、それも大切だ。
しかし、仕事を増やし続けている工場を見ると、もっと重要な相手がいる。
それが設計担当者である。
実は、新製品の立ち上げや重要案件の多くは、設計者の意見が大きな影響力を持っている。
購買担当者は価格を見る。
しかし設計者は、
「本当に作れるのか」
「品質は大丈夫か」
「量産時に問題は起きないか」
「開発スケジュールに間に合うか」
を見ている。
つまり、設計者が安心して任せられる会社になれば、競合他社よりも圧倒的に有利になるのである。
私が見てきた優良工場の社長は、設計者との会話を非常に大切にしていた。
彼らは図面が届いたら見積もりだけを返すのではない。
「この公差は本当に必要でしょうか」
「この部分の形状なら加工時間を短縮できます」
「こちらの材質のほうが強度とコストのバランスが良いと思います」
こうした提案を必ず行う。
設計者からすると、これは非常にありがたい。
なぜなら設計者もまた、多くの課題と戦っているからだ。
開発日程は厳しい。
原価低減も求められる。
品質責任も負う。
その中で現場目線の提案をしてくれる会社は貴重な存在になる。
そして一度信頼関係ができると、大きな変化が起きる。
新しい案件が出たとき、
「まずあの会社に相談しよう」
となるのである。
ここが重要だ。
見積依頼が来る時点では、すでに勝負が始まっている。
だが相談が来る段階まで入り込めると、競争そのものを避けられる。
価格競争はなくならない。
しかし、相談される会社と見積だけ出す会社では立場がまったく違う。
設計者が味方になれば、
試作の仕事が増える。
改善案件が増える。
量産案件が増える。
そして他部署にも紹介される。
顧客内部で自然に横展開されていくのである。
逆に設計者との接点がない会社はどうなるか。
図面が来る。
見積もりを出す。
価格で比較される。
受注できるかどうかは運次第。
この状態から抜け出せない。
だから設計者との関係構築は、単なる営業活動ではない。
経営戦略そのものなのである。
では、どうすれば設計者から信頼されるのか。
答えは難しくない。
約束を守ることだ。
納期を守る。
問題が起きたらすぐ報告する。
改善案を持っていく。
分からないことは正直に聞く。
特別な営業テクニックではない。
当たり前のことを徹底するだけである。
実際に信頼されている町工場ほど、派手な営業はしていない。
誠実に対応し続けているだけだ。
しかし、その積み重ねが十年後、二十年後には大きな差になる。
設計者の信頼を得た会社は、新製品開発に呼ばれる。
新製品開発に呼ばれる会社は、顧客の未来に入り込める。
そして顧客の未来に入り込んだ会社は、簡単には代替されない。
町工場が目指すべき姿はそこにある。
加工を依頼される会社ではなく、最初に相談される会社になることだ。
それが利益率を高め、価格競争から抜け出し、長く生き残るための最短ルートなのである。
次回予告
次回は、
「試作品で利益を考えてはいけない理由」
について解説する。
試作は儲からない。
そう考える経営者は多い。
しかし繁盛している工場ほど、試作案件を最重要視している。
なぜ試作が将来の大きな利益につながるのか。
町工場経営の重要な考え方をお伝えしたい。す。
