前回、新製品開発プロセスに入り込む重要性について解説した。
試作、量産準備、量産まで入り込めれば、顧客との関係は飛躍的に強くなる。
しかし、本当に強い会社はさらに一歩先にいる。
それが、設計段階から提案できる会社だ。
町工場の経営者の多くは、
「図面をもらったら加工するものだ」
と考えている。
だが、利益を上げ続ける会社は違う。
図面を受け取った瞬間に、
「もっと安く作れませんか」
「もっと精度を出せます」
「この形状なら不良を減らせます」
という提案を始める。
つまり、加工会社ではなく技術パートナーとして動いているのである。
なぜ設計段階が重要なのか。
理由は単純だ。
製品のコストの大半は設計段階で決まるからである。
量産が始まってから改善しようとしても、大きな変更は難しい。
金型も作っている。
検査基準も決まっている。
生産ラインも動いている。
今さら形状変更はできない。
しかし設計段階なら違う。
図面が確定する前なら、いくらでも改善できる。
だから顧客にとっても価値が大きい。
そして提案した会社の存在価値も一気に高くなる。
実際に私が見てきた優良工場は、必ずと言っていいほど図面をそのまま受け入れない。
もちろん無理に否定するわけではない。
もっと良い方法がないかを考えるのである。
例えば、
加工工程を一つ減らせないか。
材料費を下げられないか。
検査工数を減らせないか。
組立作業を簡単にできないか。
こうした視点を常に持っている。
設計者は設計のプロである。
しかし製造現場のプロではない。
逆に町工場は製造現場を知り尽くしている。
だから提案できる。
だから価値が生まれる。
ここで大切なのは、「価格」ではなく「提案」で勝負することだ。
価格だけで選ばれる会社は、もっと安い会社が現れれば簡単に切られる。
しかし設計改善を提案できる会社は違う。
顧客の利益に貢献しているからだ。
実際、顧客が求めているのは加工そのものではない。
利益である。
品質である。
納期である。
つまり経営課題の解決である。
その解決に貢献できる会社は、価格競争から抜け出せる。
私はこれまで数多くの町工場を見てきたが、儲かっている会社ほど営業担当者より技術者が顧客先へ足を運んでいる。
現場を見ている。
設計者と話している。
試作品を触っている。
だから提案できる。
だから仕事が増える。
だから利益も増える。
町工場が目指すべき姿は、単なる加工業者ではない。
顧客の設計部門から相談される存在である。
「この図面で問題ありませんか」
「もっと良い方法はありませんか」
「量産を考えるとどうでしょうか」
こうした相談が来るようになれば、価格競争はほぼ終わる。
顧客はあなたを外注先ではなく、開発メンバーとして扱い始めるからだ。
そして、その関係は極めて強い。
他社へ切り替えることが難しくなる。
まさに深掘りの最上位レベルである。
設計段階で提案できる会社になる。
これが、町工場が利益率を高め、長期的に生き残るための大きな分岐点なのである。
次回予告
次回は、
「設計者を味方につける会社が勝ち続ける理由」
について解説する。
実は町工場の仕事を決めているのは購買担当者ではない。
設計者の信頼を得た会社こそが、新製品開発の中心に入り込み、競合を寄せ付けない存在になる。
その具体的な方法をお伝えしたい。
