前回は、STP分析の基本を解説した。
今回は、それを町工場の現場に落とし込み、どのように具体的な戦略として使えるのかを示す。
抽象的な理論が、実際の経営判断にどう役立つかを理解してほしい。
まずS(Segmentation)。
ある金属加工会社を例にする。
この会社は、切断、曲げ、溶接、研磨など、幅広い加工を請け負っていた。
しかし、どの加工も競合が多く、価格競争に巻き込まれていた。
そこで、加工内容を細分化し、どの分野で強みがあるかを洗い出した。
結果として、他社よりも曲げ加工の精度が高く、短納期に対応できることが分かった。
市場を細分化したことで、自社の強みが浮き上がった。
次にT(Targeting)。
曲げ加工の中でも、特に小ロットの試作依頼が多いことに気づいた。
大量生産では大企業に勝てないが、試作や小ロットなら自社の設備と人材で十分対応できる。
そこで、試作特化の市場を狙うことにした。
資源が限られた町工場にとって、勝てる市場を選ぶことは極めて重要である。
最後にP(Positioning)。
試作市場には競合も存在する。
そこで、競合他社の特徴を調べたところ、納期が遅い会社が多いことが分かった。
自社は短納期に強みがあるため、納期特化の立ち位置を取ることにした。
具体的には、試作加工を三日以内に納品することを約束し、見積もりも即日対応する体制を整えた。
この立ち位置が明確になったことで、顧客は「試作ならこの会社」と認識するようになった。
このように、STP分析は抽象的な理論ではなく、現場で使える実践的な道具である。
市場を細分化し、勝てる場所を選び、強みが最も輝く立ち位置を取る。
この三つが揃えば、ブランドの核が生まれ、価格競争から抜け出すことができる。
次回は、ブランドをさらに強化するために必要な「専門特化」の考え方を解説する。
市場を絞ることを恐れる経営者は多いが、専門特化こそが利益率を高める最短ルートになる。
